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ProjectMeltDown

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Ver.White ACT2

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瞳に映る惑星
Ver.White act-2


     明転。地明かり。軽めのインストウルメンタル、有線としてかかる。
     青木の店。営業中。


かおり   以上で、ご注文お揃いでしょうか。

かずま   あ・・・

きよみ   はい、大丈夫。よね?

かずま   あ。ああ・・・

かおり   じゃあ、失礼します。


     香織、カウンターへ。


きよみ   和馬。どしたの。

かずま   ああ。うん。

きよみ   和馬ー。聞こえるかあ。

かずま   な!・・・何?

きよみ   何、ぼっとしてんの。

かずま   いや、別に。

きよみ   とか言って、目線どこに・・・あの、女子高生?

かずま   え、あれ高校生?

きよみ   っほほう。やっぱり、あの子かあ。

かずま   違うよ、ただ。

きよみ   ただ、何?

かずま   ずりい。

きよみ   あら、もう一回聞くわよ。ただ、何?

かずま   喜代美が可愛いなあって。

きよみ   じゃあ、私の方見て、言わないとね。

かずま   あんまり見ると他の女の子が見劣りするから、控えてんの。

きよみ   ・・・随分、感じのいい台詞ね。ま、いいか。逃げるわけじゃないし。

かずま   逃げるってなんだよ。人をペットみたいに。

きよみ   ペットじゃないから言ってんのよ。ペットだったら逃げるかなって。

かずま   なんか騙されてんな、俺。

きよみ   どっちがよ。引っかけたのは和馬でしょ。掛かったのは私。本質的に振り回してるのも和馬。

かずま   なんか、すっげえ理屈っぽいな。

きよみ   頭よくないといい女にはなれないのよ。


       カウンター。美穂、香織、正樹がいる。


美穂    どうだった?

かおり   たぶんフリーター。女のほうは大学生かな。

まさき   何の話?

美穂    正樹君、どう思う?あの2人。

まさき   さあ、普通のカップルじゃないですか。

美穂    なんか浮いてると思わない?どっちも目立ってるみたい。

まさき   え、それでなんなんですか。

かおり   だからあ、調査中。何者か突き止めるのが我々の使命なのだよ。

まさき   なのだよって、お客さんでしょ、そういうこと立ち入っちゃだめなんじゃないか。

美穂    正樹君。君の使命はあの男性の身元を突き止めることである。

かおり   くれぐれも、あのデルモ顔女に捕まらないように。

まさき   え、ちょちょ、だめだって。美穂さ-ん。

美穂    行って、正樹君。

かおり   正樹。行けえ。

まさき   店長。小泉姉妹がいじめるー。オバサン化して僕をいじめるー。

あおき   正樹い、小泉姉妹にオバサンはやばいだろ。

かおり   正樹い。誰がオバサンだってえ。

まさき   いや、決して香織ちゃんの、いえ、香織様のことでは。

美穂    ・・・。正樹君・・・。

まさき   う。うああ。美穂さあん。美穂さんまでそういう展開に持ってくんですか。子供をからかわないで下さいよ。

美穂    やっぱり私のことオバ・・・。

まさき   いや、ですから、誰も。店長おお。

あおき   そのぐらい、自分で何とかしようよ。学生なんだし。

まさき   ですから、女の子の扱い知らないんですってば。

かおり   扱うだあ。香織様あつかうだあ。

まさき   美穂さん、この子調子乗せすぎですよ。

かおり   ああー。お姉ちゃんに逃げるのかあ。

まさき   タチ悪いな香織ちゃん。少し、むっと来たよ。

かおり   何が来たの?

まさき   揚げ足取らない。

かおり   これ?

まさき   それは生足。やめてよそういう冗談。

美穂    まあこれぐらいにしとくか。香織、仕事、仕事。

かおり   はあい。お姉ちゃん。じゃ、洗面台でも拭いてくるね。

まさき   美穂さん。ありがとうございます。

美穂    ありがたついでに、あのカップル、マークしといてね。

まさき   また振り出しに。あの、何の意味が。

美穂    ちょっと、いい予感するんだな。

まさき   予感って・・・あれ、そういう話する人でしたっけ。

美穂    冴えてるわよ私の勘は。

まさき   女の勘ですか。僕には未知の領域ですね。あのカップル、調べてどうかなるんですか。

美穂    あの女の人、美人だしね。ね、店長。

あおき   まあ、勉強にはなるんじゃない。

美穂    ほう、美人てだけじゃまだ足りないんですか。

青木    もちろん。それよりあのDJ、気になるんだよね。

美穂    あれDJなの。

青木    バイトだとは思うけどね。

正樹    あの、話が見えないんですが。

青木    まあ、見るだけ、見といてみな。あの女子大生。

正樹    はあ。


       喜代美と和馬のテーブル。


和馬    ちょっと、トイレ行ってくる。コーヒーおかわりしといて。

喜代美   いいよ。どれ。

和馬    さっきのって言っといて。

喜代美   ブラジルだっけ。

和馬    あ、それそれ。お願いねー。

       和馬、トイレへ。
       トイレ前。香織がハンドペーパーを交換している。
       和馬、来る。

香織    あ、すいません。あ、中は使えますよ。

和馬    あのさ。

香織    あ、はい。

和馬    こうこうせい?

香織    え、あ、はい。あの・・・

和馬    バイト忙しい?

香織    はあ。はい。

和馬    何時からやってんの?

香織    開店からですけど。

和馬    何時まで?

香織    はあ、もすこ・・・あの、それが。

和馬    ほっちむり好き?

香織    はい。好きですけど。

和馬    ケーキ好き?

香織    そりゃもう。あ、好きですけど。

和馬    このあと、空いてる?

香織    はあ、空いてますが。え?

和馬    じゃあ、待ってるから。外で。

香織    え、何言ってんですか。じゃなくて困り。


       和馬、香織にキス。


和馬    ひとめ惚れ。本気だよ。じゃ、後で。


       和馬、個室に入りドア閉める。
       香織、唖然としたあと、カウンターへ。
       喜代美、ウエイターを呼びつけている。


正樹    では、ブラジルとウインナーコーヒーですね。

喜代美   あ、お願い。あ!

正樹    はい。

喜代美   武総大の人?

正樹    はあ、そうですが。

喜代美   あー、ちょっと聞いただけ。ごめんなさい、仕事の邪魔して。

正樹    はあ。では、少々、お待ちください。


       正樹、カウンターへ来る。


正樹    コーヒー。ブラジーとウイン入りました。

青木    あーい。ひとっつずつ?

正樹    はい、イチずつです。

美穂    何、話してたの。

正樹    武総大かって聞かれました。

美穂    じゃあ、あの子も武総大かしら。

正樹    あ、そーか。そうですね、それ、アリですね。美穂さん、よく、そういうの分かりますね。

美穂    まあねー。というか、君、自分の大学名きいたらピンとくるもんでしょ。でも、見たことないの?大学で。

正樹    あの人ですか。いや-全然、見覚えないっすよ。

美穂    あれだけ目立つ娘も珍しいと思うけどなあ。

正樹    大学じゃ美人ほど目立たないんです。

美穂    何で?

正樹    取り巻きって言うのかな、

      キレイメの女性の回りには野郎がいっぱいいるから外からじゃ見えないもんなんです。

美穂    うち女子大だから、そんなおいしそうな状況経験ないや。

正樹    美穂さあん・・・

美穂    どしたの?

青木    女の人に対する幻想が崩れていく瞬間、だな。

美穂    そうなの?

青木    美人がトイレに行くのも認めたくない。正樹少年の純粋さもこうやって失われていくんだな。

美穂    へー。店長は?

青木    ぼくはほら、大人だし。ずいぶん昔のことだよ。

美穂    興味あるなー、そこらへん。

青木    ま、そのうちね。

美穂    そのうちねえ?

正樹    あれ、美穂さんもしかして。帰り・・・

美穂    アガリは正樹君と一緒の時間よ。

青木    正樹、こないだ香織ちゃん送ったから、美穂ちゃんちわかるよね。

正樹    え、あ、はい。

青木    送っといてね。

正樹    え。

美穂    と、いうわけだからよろしくね、正樹くんっ。

正樹    ・・・あ、はいい。

美穂    よしよし。君には聞きたいこと山積みなんだぞ。

正樹    ええっ。何を。

美穂    それは帰りのお楽しみ。


       香織、帰ってくる。


香織    ・・・。

美穂    どうしたの?香織。

香織    ・・・ん・・・何でもない。

青木    なんか変だよ。

香織    なんでも。ないです。

美穂    本当?ならいいけど。

香織    ・・・うん。

正樹    大丈夫?ぼうっとしてるけど。

香織    ・・・。

正樹    なんだよ、今度は。いきなり睨むなって。

香織    うるっさいなあ・・・

正樹    うるさいはないだろ、心配して聞いてんだから。

香織    ・・・。店長。私、そろそろ帰っていいですか。

青木    え、アト・・・10分くらいか、いいよ。今から着替えて、時間通りぐらいでしょ。

香織    ありがとうございます。


       香織、控室へ。
       レジ前。和馬が待つ。喜代美、外へ出る。
       喜代美の出た時のチャイム音、店員達気づく。美穂、急いでレジに立つ。


美穂    ・・・お待たせしました。え、っと。御会計・・・が、千と八百八十円になります。

和馬    これでお願い。

美穂    二千円からでよろしいですね。

和馬    はーい。

美穂    ・・・それでは百二十円のお返しになりまあす。

和馬    んー。

美穂    ありがとうございましたまたおこしください。

店員    「ありがとうございましたー


       和馬、店を出る。


喜代美   「いくらー

和馬    「いいよ。こんどなんかおごって

喜代美   「うん。じゃあね。あした電話するから


       カウンター。美穂が戻る。


美穂    帰っちゃったね。

正樹    はあ。

美穂    結局、何者かわかんなかったね。

正樹    はあ。・・・あんまり興味なかったんで。

美穂    ・・・正樹君。君、もう少し好奇心持ちなさい。

正樹    はあ。

美穂    そうこう言ってるうちに、年取っちゃうんだぞ。お姉さんを見なさい!好奇心いっぱいだから若いこと。

正樹    はあ・・・はい・・・

青木    クス。

美穂    あああてんちょお。今のツケにしとくからねえ。

青木    いや、どっかで聞いたことあるなあって。

美穂    どうせ誰かさんの受け売りですよおだ。


       香織、帰ってくる。
       香織、そこそこにお辞儀。


香織    じゃ、お疲れさまでしたー。

店員    おつかれー。

美穂    うちにはスグ帰んの?

香織    わかんない。


       香織、外に出る。


美穂    ・・・。

正樹    ずいぶん、適当ッスねえ。

青木    年頃だからね。

正樹    年頃、ですか。


     暗転。そして明転。まだ夕方にはなっていない。
     店の外。和馬が一人で待ってる。
     発音はしないが、何かリリックを口ずさんでいる。
     少し離れて香織が様子を伺っている。


和馬    やった。来てくれたんだ。嬉しすぎー!

香織    あ、あのさ。わる

和馬    えっと、小泉さん、かっこ「か」。

香織    え?

和馬    和枝。和子。違うかあ?和美・・・和馬、ってそりゃ俺の名前だって。あ、俺カズマね。か、か、薫。

香織    いや、あの。

和馬    近いね。

香織    へっ!?

和馬    かおり。

香織    ・・・あたり。

和馬    香織ちゃんかー。こいずみかおり。なんかアイドルっぽい名前だよね。

香織    ・・・ありがちな組み合わせじゃない?

和馬    カワイイって。ヘタに狙った名前より全然イイヨ。

香織    そう?


       香織、微笑む。和馬、見逃さない。


和馬    香織ちゃん、バイトあがったんだよね。遊びイコー。

香織    いや、初対面で出かけるのはちょっと。

和馬    お客さんと店員さんのなかじゃーん。遊ボーヨー。

香織    はは・・・カズマ?ノリいいね。

和馬    M.C.KAZUMA。19歳。

香織    外人?

和馬    気持ちだけ。つうか、名前じゃなくて肩書!

香織    おおう。香織様としたことが。エムシーね。

和馬    カワイイ!

香織    ・・・いや、照れるって、ちょっと・・・

和馬    はは、男って女の子の照れるとこ見て喜んじゃうんだよね。

香織    そうなの?

和馬    イエー。

香織    ん?なんかDJぽいね。

和馬    DJだよ。

香織    あれ?エムシ-って。

和馬    鋭いなあ。・・・MCになりたがってるDJなんだわ。

      クラヴの人とかにMCの仕事くれー、って意味でMCカズマ。

香織    クラヴかあ、DJってバイト?

和馬    イエー。しかもほとんど本業。

香織    学校は?

和馬    専門行ってたけどやめちゃった。香織ちゃんは?

香織    高校3年。

和馬    受験シーズンじゃん。

香織    へへ。推薦で通っちゃってるんだな。

和馬    すげえ。アタマいーんだあ。

香織    受験なんて、いい子ぶれるかと、毎日机に向かう習慣が・・・ってお姉ちゃんが言ってた。

和馬    俺、いい子ぶれないからなー。

香織    いーんじゃない。なんか派手そうだし。

和馬    そう?うれしーななんか。・・・ねえ、クラヴ来たことある?

香織    え。それがなぜかないんだな、あんまり派手なことしないから。それに一人で行くのアブナソーだし。

和馬    じゃ、来てみる?

香織    あれって夜しか開いてないんじゃないの?

和馬    俺つきなら入れるよ。まだ営業前だし、開いても慣れてる奴といれば危なくないから、来てみない?

香織    いいの?

和馬    いいのも何も俺今、香織ちゃんにイイトコみせたくて必死なんだけど。

香織    はは、香織様はお目が高いからねえ。

和馬    つうわけで、一番かっこいとこ見せたいな。

香織    本気い?信じないよ。

和馬    まじまじほんっとに。またこれが。すごいんだって。


       暗転。
       素人ウケしなさそうな上質のレゲエかかる。
       やがて、他の曲混ざる、思いのほかいい感じで。
       明転。鷹宮のクラヴのDJブース。鷹宮がいる。電話している。


鷹宮    えっ、あの子お。まだまだだってえ、せめてもうちょっとベシャリできないと。

      え、メジャー?何言ってんの。意味ない意味ない全然意味ない。・・・あははははははは。むだだってー。

      ・・・そんならまだカズマ使った方がいいよー。・・・何でも何も、これからはアジアンでしょ。

      いや、まだだけど。根が欧米だから、アジアンな音にいきつくんだって

      うっそー、じゃあ今度聞かしたげる。一度アジアンやらしてみよーよ。

      ・・・うん。うん。あいつもまあベシャリ未熟だけど・・・え?うんうん。

      ・・・いいねそれ。うわあ、なんか頭悪そげでいーなあ。

      ・・・え、そういう企画モノならかんげー。うっはっはっは・・・


       鷹宮、物音か何かに反応し、ドアの方を見る。


鷹宮    あ!ちょっとごめーん。誰か来た。・・・うん。ごめんね。うん、・・・とりあえず、企画書書くよ。

      うん、そっちもね。オーケエエ・・・あ、うんじゃあねまたねー・・・ふはは・・・しつれいしますううう。


       鷹宮、電話を切る。
       ドアの向こうから人の声が近づいてくる。


和馬    「ういー!

鷹宮    え?いいよ!入って!開いてるよー。


       和馬、入る。


和馬    オッハヨー!レイカさーん。

れいか   ッモウニン、カズマ。どう?元気?

和馬    ファイイン。いああ、問題ないっす。それよか、ブース使っていいすか。

れいか   いつ?

和馬    今がいッス。ツレいるんで、一緒に。

れいか   いーけど。

和馬    センキュー!ビューティーガール。

れいか   ボサナ来たら変わってやってね。あいつ今日回すから。

和馬    イエ。じゃ、いいすか。

れいか   あ、私いていい?

和馬    ツレ、女の子なんすけどいっすか。

れいか   あいかわらずだな、お前も・・・かわいきゃいーよ。

和馬    あ、全然オッケーっす。なんかキュート系っす。

れいか   どういう風に。

和馬    ううぇえう・・・レイカさんの部下、ジョシコさんヴァージョン。

れいか   なんだ?わかるよーなわかんねーよーな。まいーや、見てから考える。

和馬    イエー。


       和馬、手招きして香織を呼ぶ。
       香織、入ってくる。


かおり   あ、どうも、おじゃまします。

れいか   どうも、オーナーの鷹宮です。

かおり   は、はじめまして。

鷹宮    かわいいわねえ。

和馬    かおりちゃん、高校生。

れいか   で、こいつがカズマね。

和馬    知ってるって。

れいか   コテコテでせめてみたんだけど。

かおり   はは。

和馬    お、セーフ。・・・あ、香織ちゃん。こっち来て。

      ・・・この辺の機材が俺のパートナー。で、ポイントはこいつ、ターンテーブル。

      最近はCDのもあるけど、何だかんだ言ってレコード回してるんだ。

かおり   へー。

和馬    さて、今日はかわいい香織ちゃんのためにだけ、特別に公開する。MCカズマのサントラ実験劇場ー。

れいか   私には?

和馬    次回、乞うご期待ということで、今日は香織ちゃんスペシャルッス。

れいか   あらそう、期待しとくわ。で、何すんの今日?

和馬    ナイスな質問、ベリーサンクス。

      今日はこのターンテーブルを使って、

      なあんつってたまには普通のCDで映画的音響の勉強をしたいと思いマース。

かおり   おおー。

れいか   (拍手)


       (和馬の音響コーナー2曲紹介)
       香織、鷹宮、騒ぐ。和馬だけ残し二人去る。


和馬    俺、これいじってんのが楽しいんだよね。

      雰囲気に合わせて曲つないで。香織ちゃんはあんまし俺の周りにいない子なんだよな。

      新しい感覚が生まれるなら、おれ、どんな女でもいんだよな。

      喜代美、いつもごめんな。別に浮気してんじゃないけど、刺激がないと生きて行けないんだよ、俺。

      なあ喜代美。愛してるよ。


       音、小さくなってゆく。市街地が遠ざかる感じに。
       なんとなく照明はいる。小泉宅に向かう道、夜。
       正樹と美穂入ってくる。


美穂    ねえ、正樹君。好きなひととかいる?

正樹    え、いや、そりゃ、いますけど。

美穂    だれ、誰?

正樹    そんな、いえませんよ。

美穂    どこの子?学校のひと?

正樹    いえ。

美穂    えー、じゃあ、そういうトモダチ?

正樹    なんすかそれ?

美穂    よくあるじゃない、女友達で長いつきあいなんだけど、恋人となるとどっちも臆病になっちゃうみたいな。

正樹    いやあ、そういう人いないんすよ。

美穂    じゃあ・・・バイト先?

正樹    え!いや、まさか。

美穂    だって、他に考えられないじゃない。

正樹    いや、確かにそうなんですけど。そんな、すぐばれちゃうじゃないですか、人数少ないんですから。

美穂    えー。いいじゃん。そうだ、ヒントちょうだい。えっと、イニシャル頭文字でいいから。

      ねってば、正樹くーん。

正樹    え・・・。・・・ケーです。

美穂    え、なんかいっぱいいるよKって。名前?名字?

正樹    いや、そこまで言わすんですか。・・・

美穂    じゃあ小泉・・・香織。名字も名前もK。

正樹    違いますよお。だいたい仲悪いじゃないですか。

      そうだ。あの、美穂さんはいないんですか?恋人とか。自分ばっかり聞かれても。

美穂    いるよ。好きな人。

正樹    何者ですか?

美穂    婚約者!

正樹    え?

美穂    になったらいいなって思ってる人。

正樹    ええ?今はなんなんですか。

美穂    わかんない。遊ばれたのかもしれないし、彼女と思ってくれてるかもしれないし。

      ・・・私はその人のことだけ考えられるけど、彼から見て私だけなのかな?って。そんな感じの恋人・・・

正樹    どういうことですか。

美穂    (お腹をちょっと意識させながら)結婚しちゃおうかなあ。

      結婚かあ、してくれるのかなあ。

正樹    少なくとも僕じゃないですね。

美穂    ・・・

正樹    僕は女の人から思われたら答えてあげるはずですから。

美穂    ・・・正樹君。私のこと好き?

正樹    え?ナナアナナナ何を。

美穂    図星でしょ。

正樹    ・・・

美穂    ごめんね変な詮索して。気づいてたよ、正樹君が見てたの。でもね人間て見られてるだけじゃだめなのよね。

正樹    なんの話ですか。

美穂    君の視線はただの憧れってやつよ。ホントの好きとは違う。

正樹    そんな話!黙ってれば自然に消えていく気持ちなのに。

美穂    ごめんなさい。でも、今のうちに聞いておきたかったの。

      私、正樹君のこと弟みたいに思ってるから、傷付けたくなくて。

      あーあ、君のこと見てる女の子だっているんだよ。

正樹    誰?ですか。

美穂    ブーニー。まあだ、教えてあげない。

正樹    えー。ずるいですよ、そこまで言って。それにブーニーってなんすか、最近よく言われる気がしますけど。

美穂    そのうちわかるって。ブーニー君。

正樹    だからなんなんですか。ブーニーって。

美穂    ・・・(真顔で)正樹。

正樹    ・・・はい。


       美穂、遠くを指さす。正樹、そっちを見る。


美穂    馬鹿が見るー。

正樹    美穂さーん。


       美穂、歩き。


美穂    私門限あるんだから、行くよ。

正樹    待ってくださいよお。

美穂    ほら、前を歩いて。


       正樹が先を越し、掃けていく。


美穂    正樹君。私に自信をありがとう。

      誰かに見られてるのがわかると、輝くんもんなんだね。私はもうじき正念場。

      君は君で失恋の中で大きくなるんだよ。私はかっこよくなった正樹君みてみたいや。

        暗転。



Ver.White 第3場へ続く

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